うわのそら  2009年12月3日

 
 深夜シンクの前に立ち、
 夫とふたり、
 レモンを半分ずつかじりました。
 
 先週土曜のお菓子作りでレモン汁をしぼったきり、
 新しい使い道を見出せないまま冷蔵庫にころがっていたので、
 明日はゴミの日だし今からかじってしまおうよと、
 ゴミにするためかじりました。

 ひとかじりしてそのすっぱさに身悶えながら、
 「フッヌァンッ」
 「ンツァツッ」
 と、くしゃくしゃの顔で同時にすっぱさ感嘆詞をもらし、
 あぁすっぱいと笑いました。

 台所中がレモンのすっぱい香りで満ちて、
 レモンをしぼる指先が赤くて冷たくて、
 この感覚はなにかにそっくりだ・・・
 と思ったけれど、
 それがなんなのかわからないまま、
 レモン果汁は搾り尽くされ、
 ホットミルクにまぜられて、
 ゴミの日のゴミになってしまいました。

 レモンを見るとどうしても、
 一度かじらなければいけない気持になるのは、
 なぜだろう。
 
 あの身悶えするすっぱさを、
 どうして何度も、
 味わいたくなるのだろう。